このページは近年の火星探査の結果判明した内容ではありません。過去、火星に送り込まれたマリナーとバイキングの探査によって得られたデータから解明できたことを掲載しました。その詳細に渡っての興味深い内容に新たな発見をすることと思います。
火星は雲の多い惑星であったこと。水が考えられてきたよりも多くあったことなど、隣の惑星が地球と相似した環境を持ち合わせていたことは、現在発表される火星情報と比較して意外な気がします。
アメリカの火星探査マリナー計画(1962年~1975年)とバイキング1号(1975年7月打ち上げ)バイキング2号(1975年9月打ち上げ)による今から50年以上前の火星探査によって、これだけのことがわかっていたにもかかわらず、近年の探査の結果はまだ判然としたことが発表されず過去の域を出ない状況なのです。
今後の探査結果が公表されることによって、われわれの既成概念を覆すものになっていくのか、これまで、ある程度火星の気象現象が判明し、またバイキングが火星着陸の際にパラシュートを用いた事実などを考えたとき、われわれが聴かされてきた火星の大気圧が発表よりもはるかに高いことが想像できます。大国は、自国の利害のために地球人類の福利を損なう真実の情報を隠している可能性があることを、過去の多くの事例から考えなければならないと思います。
「火星は目覚ましく多様な地形を持ち、過去に地質学的な活動状態が存在した。撮影された写真の中には、巨大な火山、グランドキャニオンより大きな峡谷システム、極地方の沈殿物、流れによって形成されたと考えられる谷などがある。
火星にはおおざっぱに明白に異なった2つの半球に分けることができる。南半球に行くにつれてクレーターは密に分布するようになり月の高地に似たような地形を示す。北半球の大部分は平原である。南半球の境界は、あたかもクレーターの多い地形が緩やかに破壊されたかの様に見える。」

オリンポス山
楯状火山 火星でもっとも印象的な地形の一つは、直径が数百キロで地球の最高峰より高い楯状(じゅんじょう)火山である。そのうちもっとも若くて大きいものはオリンパス山で、直径は約600キロあり、この地球上でこれにもっとも良く似た地形であるハワイのマウア・ロナ火山の3倍の大きさである。オリンパス山の頂上は周囲の地形より25キロ高くなっており、エベレスト山の海抜の2倍半もある。楯状地の頂上近くには複雑なカルデラがある。すなわち、かつて溶岩の出口であった崩壊した地形である。火星の地殻構造は、非常に重要な点で地球の地殻構造と異なっている。
地球の地殻は一連のプレートに分割されており、それらが互いに相対運動しながら、地球上の地理的配列を変えている。火星では地殻が水平方向に移動している形跡は見られない。このように、火星の地殻がプレート運動しないことが、火星の楯状火山が非常に巨大である理由かもしれない。
地球では火山性楯状地帯が形成されつつある地殻は、楯状地に物質を供給している内部の深い領域に対して運動をしている。その結果楯状火山の長い連なりが形成される。アリューシャン列島からハワイ諸島まで伸びているハワイアン・エンペラー火山帯がその例である。
火星では地殻が厚すぎて分裂できないであろう。地殻の厚さは火山の高さから推定できる。マグマを火山の頂上までポンプアップするのに必要な流体性力学的圧力から考えると、マグマは少なくとも地下200キロの場所で溶解されねばならないが、これはハワイ火山に必要な深さの4倍の値である。
マリネリス渓谷
峡谷 マリネリスは南緯5度から10度くらいのところを東西に走る大地溝で延々4000キロ以上にわたってのびている。幅は所々1000キロに達しその深さも5000メートル~6000メートルくらいある。「火星のグランド・キャニオン」とも呼ばれているが、米国西部のグランド・キャニオン(延長347キロ、幅6~29キロ)などとはけた違いの規模を持ったものである。
大きな峡谷の壁は、複雑で水平な明暗のある物質の層を見せている。これは、火星における複雑な地質学を示している。ほとんど同じ厚さのものが積み重ねられ、明暗が交互の層は大きな峡谷の壁のあちこちに散見される。場所によっては1カ所に22の層を数えることができる。この規則的な層は火星の気候の循環か、あるいは風で吹き飛ばされた堆積物を示しているのかもしれない。層の均一性は気候の作用を強く暗示している。

水路 マリナー9号の成果のうちでもっとも注目すべきものの一つは、流水によって形成されたように見える曲がりくねった水路の発見である。その最大のものは長さ1500キロ、幅200キロに達する。この大きな水路は赤道地方の年間気温が最高である地域に、主として発見されている。
ところどころに、明らかに大きな水路の水源と考えられるものが存在する。しかし、他の多くの水路では、はっきりした水源は見当たらない。支流を持つ水路の場合には、水源が広い領域に渡っていたことは明らかである。



マリナー9号とバイキングの周回船は、火星を明るい早朝の霧がその床を満たしている古い河床に似た水路を持つ惑星としてとらえた。水路は火星の地域一面に曲がりくねっていて、高度約10000メートルから見たときの地上の大きな川のように見えた。多くの水路は浸食された地球の深い割れ目のようだった。しかし、もし水が水路を浸食したとするならば、水はどこから生じ現在はどこにあるのだろうか? この疑問に科学者は苦しまねばならなかった。
3つの主要なタイプの地形(層を成した堆積物と、広大な砂丘原と、クレーター化された平地)がわかる。暗い地域は段丘になった斜面から氷が解けた場所を表していると思われ、ひと連なりの渦を巻いた帯としてはっきりと見えた。段丘はその平らな表面上に氷の堆積物があり、垂直な表面を露出していた。何百万年にも渡って風に運ばれ氷と混ざっている塵の堆積のために、表面下の岩石中に、おそらく層を成しているのであろう。火星は5万年と200万年の長さの気候上のサイクルを持っている。極地のおのおのの層はこの種の時間尺度と関連しているのかもしれない。バイキングで見るかぎりでは、この気候上のサイクルを越えて堆積が浸食に代わり、そして再び堆積に変化したときに気候が少なくとも2回大きく変化したことがわかる。浸食された物質は北緯80度ないし75度まで広がっている永久極冠を300キロメートルの幅の砂丘の帯を形成し取り
万年氷は水で構成されている。これに対して季節的な氷は水と二酸化炭素の両方を含んでいた。万年氷は堆積層の主要部分をおおい、極冠の回りの斑点の中と砂丘の中とクレーター化された平原上にもあった。写真は平らな地域上に集中した氷の渦状模様を明らかにしていた。しかし、斜面にはほとんど万年氷がなかった。反射率が低いので多量の塵が氷と混じっているのがわかった。
極領域氷は予想されたよりもずっと厚いように見えた。それは表面模様から推測すると10メートルから数百メートルの間であろう氷の端にはサーチライトの光線のような形をした異常な模様があった。われわれは長年にわたっての主要な論争に答えを出した。永久極冠は水の氷からできているという答えである。極領域には二酸化炭素の貯蔵庫は存在しないのである。周回軌道から測定された温度は、二酸化炭素の残った極冠にしては高すぎた。極冠の暗い領域はマイナス38℃からマイナス33℃程度の温度である。白い領域はマイナス68℃からマイナス63℃程度の温度であるらしい。二酸化炭素であるはずがない。その温度では二酸化炭素は蒸発してしまうだろう。
「最初の宇宙船が火星に向かって出発した時点まではいくつかの観測された特性に関する天文学者の見解はだいたい一致していた。すなわち、火星大気には雲が存在する。極冠は季節につれて消長する。いろいろな緯度における火星の表面は季節的な色の変化をしばしば示し大規模な塵の嵐が周期的に表面を吹き荒れるなどという点についてである。」
台風を思わせる渦巻き雲

火星の雲 火星には少なくとも2つの型の水の雲がある。朝と夕方の雲は昼と夜に起因する表面のもやであり、地球の低地平原でしばしば見られる朝もやに似たものであろう。他の雲は一団の空気が上方へ運動し、低温で凝結の起こる高さに達することに起因する。これらの雲は1日ごとに火山の側面に見られるのである。
氷の結晶は1日の遅い時刻に空気中の塵粒の上に形成され、火星の表面に降って一晩中氷として残るだろうと示唆した。日の出の後で温度が上がる時、この氷と塵は水が水蒸気に蒸発する前に液体段階を通過する。火星のある緯度においては2,3時間続く表面の湿った段階が毎日存在するだろう。
バイキングは全体的な水蒸気の分布図を作成した。中緯度地方では水蒸気の量の変化はでたらめであった。ある地域では夜明けから日没まで減少し、他の地域では日中ゆっくりした増加が見られた。また他の地域では日中の変化を示さなかった。このでたらめな性質は雲の増加によるのかもしれなかった。一般に、火星の高地は低地よりも水蒸気が少なかった。そして、水蒸気は北緯70度から80度で火星を取り巻く帯の中にもっとも豊富であった。火星の大気中では湿度は概して高く低温ではめいっぱい水蒸気を含んでいる。火星は雲の多い惑星であり、多様な型の雲が確認されている。
火星の南半球よりも北半球の方によく見られるもやは、一面の濃い凝結であり、小さな塵の粒子への凝結によるものかもしれない。また、約10キロメートルの波模様を示すこともある。このような雲は赤い光とすみれ色の光で同じように見え、赤い光はもやの下の表面を透視する助けとはならない。したがってもやを作り上げている粒子はかなり大きいに違いない。もやは高地が突き出している低くたれ込めた霧と対照的に、表面の模様をぼやけさせるほど火星の大気中の高所まで広がっている。
拡散した白い雲が時々一面に広がったもやの中に見えることがある。それはすみれ色でより明るく見え、もやの粒子よりも小さな粒子なのであろう。何時間も何日間も衰えないことが多年にわたり望遠鏡で観測されてきた。それらは早く動いているようには見えないのである。
表面の模様に関係した大きな雲の系は、山の多い地域、とりわけ高原および火山と関連している。これらの雲は午前中は拡散した塊のように見え、もっと複雑な構造に発展する。地球から何十年にも渡って観測されてきており、W型にくっきり見えることもある。それらは典型的な山岳雲のように見える。山岳雲は地球上では大気の塊がゆっくりと動くにつれて上昇し、水分がより温度の低い高所で凝結したときに形成される。それらの雲のいくつかは、ほとんど火山の頂上まで、すなわち火星の平均表面上約20キロメートルまで上昇する。
群をなして時々毎秒60メートルもの速さで移動するきれぎれの少雲からなる対流性の雲もある。これは午前中に表面近くで加熱されて、上昇した大気のガスによるものと思われる。膨張による冷却が水分を凝縮させ雲を形成するのである。赤道地方で正午頃、5キロメートルかその程度の高度にしばしば表れる。
オリンポス山
火星の波形の雲は最初マリナー9号によって観測された。それらは強い風が峰やクレーターの壁のような妨害物を横切って吹くときに形成され、風の動きに妨害物があるときに形成される波頭に表われる。この波形の雲は火星の風の流れの研究に究めて価値があり、風のパターンが地球の同じ緯度のものと非常によく似ている。しかし火星の風は同じような緯度ではずっと早く動いている。
クレーターや水路の底にある明るい斑点はバイキングによる驚くべき発見であった。朝の太陽が地面の霜を冷たい空気中で霧に凝縮する水蒸気へと変えるのである。これは水分が火星の表面と大気との間で毎日交換されつつあることを示しているので驚くべき発見であった。
1964年の宇宙船による最初の火星の写真上に発見されたものに、分離した雲の層がある。一番高いものは表面上40キロメートルあり、さらに高いものもある。火星の表面から見上げると透明に見えるであろう。

水 火星上の水の量は地球の基準では少なめである。火星が地球の百分の一のガスしか漏出していないとしても、火星全体を覆う13メートルの水となる。極冠は水としても十分には蓄えていない。すべての氷が溶けたとしても、火星全体を覆う約2メートルの水しか供給しえない。しかも火星の進化の間には約1メートルの水しか外気圏から宇宙空間へ逃げ出さなかったであろう。
大気 火星の大気は80パーセントが二酸化炭素で、残りが窒素とアルゴンであると見られた。マリナー4号による側方通過は生命の可能性に対してもっとも重要なこと、表面圧力がたった4~7ミリバールであることを示した。これは地球の大気では高度34キロメートルの圧力に相当する。
両宇宙船による温度の断面図は30キロメートル以上では波形の形をし、複雑な温度分布を示していた。二番目のバイキングの結果もまた最初のバイキングで得られた結果と違っていた。温度の波は火星の数日間の熱循環の記録であると考えられた。表面の熱循環は毎時一キロメートルで熱の放射移動によって上方に動いている。すなわち、熱を運ぶ大気の対流移動に対比して、放射による熱の大気中への移動であると考えられた。
大気全体を通して、温度は二酸化炭素が凝固する温度よりも十分高かった。火星上の雲や霧は二酸化炭素ではなく、主として水から構成されているに違いない。
塵嵐(じんあらし) 局地的な塵嵐がバイキングの写真に記録されたものがあった。火星全体の塵嵐は太陽との合の前には予想もされなかったし、見られもしなかった。このタイプの嵐は通常、火星が近日点で太陽の近くに接近して、大気が太陽エネルギーの最大量を受け取るまでは起こらない。バイキングはのちにいくつかの非常に大きな塵嵐を観測した。塵嵐は塵を含んだ大気が多くの熱を吸収し、潮汐による風が塵を扶養させ大気の加熱を更に増加させる限界点まで増加させるために起こると考えられている。はじまりは局地的な地形上の風が潮汐による風に加わって作用し始めるときであろう。このようにして塵嵐は火星の一つの地域で始まり、急速に火星のぐるりに広がっていくように見えるのである。
電離層 火星大気の最高領域における通路実験は、大気ガスの中の原子や分子が太陽輻射によって帯電する電離層の性質を調べる。以前にマリナーは火星の上層大気を通して電波を送り、地球の80キロメートルと100キロメートルにあるDとEの電離層に似た火星の電離層が130キロメートルの高度に存在することを発見した。


「惑星が生命を成長させ、支え得るには三つのことが必要である。先ず第一に大気がなければならない。次に水が存在しなければならない。三番目に惑星上の温度が適当でなければならない。火星は大気を持っているし水も持っている。そして表面温度は地球上のある種の生命にとっては辛うじて生存可能な範囲にある。
生物の三つの側面を探す。すなわち食物の生産(植物のように)食物の消費(動物のように)そして大気ガスの変化(植物動物両方のように)」
火星着陸 着陸船は宇宙船が火星大気中に高速度で突入するときの強烈な熱から守られるために、飛行シェルと呼ばれる防護カプセルの中に入れられていた。降下し着陸する間、着陸船は中継基地として働く周回船と電波交信を続けるのである。飛行シェルに働く大気摩擦は、火星表面から約6400メートルでパラシュートが使えるほどゆっくり動くようになるまで着陸船を減速させる。それから飛行シェルは捨てられパラシュートが表面から約1.6キロメートルになるまで減速し続ける。次に、着陸船の3つのエンジンが点火し、パラシュートは捨てられて13分以内に火星表面に降り立つのである。
1976年7月20日午前1時15分、周回船が楕円軌道の最高点付近を通過したときに着陸船が切り離され、ゆっくりと表面への長い降下の旅を始めた。着陸船は加速され、約3時間後に飛行シェルで防護されたまま高速度で火星大気に突入した。約245キロメートルの高度である。飛行シェルは表面か過熱され、1枚1枚燃えはがされ、減速していった。7分間で減速され、表面から5900メートルでパラシュートを開き飛行シェルを投下した。着地は太平洋標準時、午前5時11分。これは地球が受信した時間すなわち着地信号が地球に到着した時間である。(バイキング1号クリセ盆地)
周回船 周回船で運ばれた主要な装置は、マリナー9号が1971年に火星の回りを周回したときよりも、もっと詳細に火星の表面の写真を撮る映像システムであった。それは二つの同じカメラで、おのおのは高倍率望遠鏡、フィルター、テレビカメラ筒そして付属電子器具が付いていた。1500キロメートルの高度からフットボール・スタジアムくらいの大きさのあるものなら何でもはっきり捕らえることができた。カメラと同じ走査台には火星の水蒸気の広がりを検出して地図を作る赤外線分光計があった。その近くには赤外線輻射計があり火星からの輻射の強度を計れば火星の表面温度を決定できた。
実験装置 無機物実験は、表面物質中にどの元素が存在するのかを探るものであった。土壌標本は、宇宙船中の発生装置から出るエックス線を照射されると粒子が元素の二次エックス線指標を生み出すのである。
有機分析実験装置はガス・クロマトグラフと質量分析器を用いて、気体の流れとして運ばれた異なる化合物を分離し、火星土壌からのこれらの化合物を分析して有機分子の痕跡を探すのである。有機分析装置の原案はジェット推進研究所でボエジャー計画のために既に開発されていた。それは、実験室を一立方フィートの体積に縮めようとする野心的計画であった。ところが、パッケージがほとんど出来上がったときに土壌粒子を実験に必要な細かさにする土壌処理器に故障が発見された。土壌粒子が研磨剤として働き、土壌を粉砕器からテスト室へ送る運搬装置を押しつぶしたのである。もう一つの問題は、粉砕器からの金属の一部が土壌と混ざって間違った表示を生み出すことであった。それでも一つのユニットをそのままにして飛行させ、もう一方のバイキング着陸船用のユニットは土壌粉砕器として固い物質を使って修正をするという決定をし、やっとのことで二つのユニットは打ち上げ時間に間に合い着陸船に取り付けられた。
有機分析実験 7月28日太平洋標準時間午前1時に、採掘の開始命令が着陸船に送られた。最初の一杯は生物学の実験に、二杯目は無機物の実験に、三杯目は有機物の実験に用いられるはずである。
午後2時にバイキング宇宙船制御室は「三つの装置のうち二つに土壌が積み込まれた。しかし残りの一つは標本を受け取ってない」という報告をした。有機分析実験の表示が点灯していなかったのである。それには四つの可能性があった。表面の標本採集器が適当な標本を引き渡さなかったか、土壌粉砕器のモータが作動しなかったか、物質が取り入れ口を通過できる微細でなかったか、ねばねばしすぎていたか、あるいは標本室の検出装置の測定器が正しく作動しなかったかであった。そこで、有機分析実験は新たな標本採集が命じられるまでストップされた。
その間に火星の土壌についての最初の重要なデータが無機(エックス線蛍光)化学分析実験で得られた。主要な構成要素は、鉄、カルシュウム、けい素、チタン、そしてアルミニュウムであった。酸化鉄は存在したが純粋な褐鉄鋼ではなく、むしろ表面だけが褐鉄鋼のように見えた。
計画管理部は8月4日に有機実験のためにも一つの標本を拾い上げることを決定した。困ったことに標本採集棒が動かなかった。火星の土壌中に有機化合物――火星の微生物の遺骸――があるかどうかが有機分析実験の役割であった。計画管理部は、前の操作でテスト室にいくらか物質が入れられているという想定で実験が行なわれるべきであるとした。一サイクルの有機分析が8月6日に開始され、翌日データが地球に送信され、結果は有機分子を含んでいなかったのである。10月18日までに有機実験テストが岩石の下からの土壌標本に対して完璧に行なわれた。そこにもやはり有機物はなかった。有機物テストは否定的な結果しかもたらさなかった。



生命検出三つの実験
(1)代謝機能テスト――代謝というのは、生物が体内に栄養物を取り入れ、化学反応を行なって身体のために役立てて、最終的に不要になったものを体外に出す働きのことである。つまり生物のもっとも基本的な性質の一つである。これを調べるには、放射線炭素14Cを含んだ栄養液をサンプルに与えればよい。もし火星の土壌の中に、水を必要とし、有機分子やイオンを同化する微生物が存在すれば栄養液を取り入れて最終的に放射性炭素を含んだCO2を発生するはずである。
(2)ガス交換実験――これは火星の微生物がある種の呼吸作用をするかどうかを調べるものである。そのため土壌サンプルを入れた培養室内には、放射性でない二酸化炭素とクリプトン、ヘリウムからなる人工大気を満たす。そして最初の実験は、少量の水蒸気だけを与えて行なう。もし火星の土壌中に、微生物にとって十分な栄養物があれば、水分を与えただけで栄養物をとり、その結果、何かを排出するだろう。
(3)光合成実験――光合成は地球上で、緑色植物が普通に行なっている反応である。光のエネルギーによって炭素を同化し、有機物を合成する生物過程をいう。それを調べるために、この実験では放射性炭素14Cで標識を付けた二酸化炭素 14CO2 と一酸化炭素 COを培養室に入れ、人工太陽の役目をするキセノン・アークランプで土壌サンプルを照射するのである。結果として、培養室の中には放射性炭素 14C入りの有機物が合成されるはずである。したがってその放射能を検出器で調べればそのような微生物の活動があったかどうかがわかるという仕掛けである。
まず(1)の代謝実験から言うと、驚いたことに激しいプラスの反応が出たのである。プラスというのは、微生物がいたとした方が都合のよいデータが示された、ということである。次に、サイクル2の実験が行なわれた。これは対照実験とも呼ばれるもので火星の土を160℃で3時間加熱殺菌した後、前と同じ栄養液の注入を行なったのである。もし火星の土に微生物がいてそれが過熱によって死滅すれば、当然、生の土を使った前のサイクル1のときよりも、はるかに低いカウントが示されるはずである。そして実験はその通りになった。バイキング2号が着陸したユートピア平原でも本質的には1号の場合と何ら変わりはなかった。サイクル2では1号のように160℃ではなく、50℃で低温殺菌する方法がとられた。50℃でも生物は破壊されるだろうし、もし化学的な反応が進行しているのだったら、その効果が小さくなるはずであると予測されたからである。その結果は1号の場合と大差はなかった。
それでは(2)の呼吸作用を調べるガス交換実験はどうであったろうか。少量の水蒸気だけを与えて2時間30分後にガス分析を行なった。すると、大量の酸素が放出されていることがわかったのである。これは水分が土に触れたとたん、酸素がどんどん出たことを物語っている。バイキング2号が着陸したユートピア平原でも同じような実験が行なわれた。最初に水分だけを与えると2~2.5時間で酸素の放出が目立った。もっともその量は1号の場合よりかなり少なかった。
最後の(3)光合成実験の結果はどのように進んだのであろうか。これは有機物の分解ではなく、合成を捜し求める実験である。培養後、有機物はキセノンランプの照射によって過熱され分解される。光合成によってできたと思われる有機物は、補足装置に捕らえられ、最終的には700℃まで過熱してガス化し、その放射能を測定するわけである。
さて、クリュセ平原の最初のサンプルは、毎分96カウントの放射能を示した。これは生物が存在しない場合に予想された値よりも6倍も高く、しかもこの数字はバクテリアの存在が確認されている地球の南極の土の反応に似ていたのである。そこで今度は、土を過熱してから実験を行なったところ、光合成の働きは急に衰えてしまい、カウントは毎分15にダウンした。これはいかにも、それまで光合成を行なっていた微生物が死んだために、もはや光合成の働きをしなくなったかのように見える。ユートピア平原では、光を遮り暗くして実験してみた。するとカウントは毎分27になった。これは、キセノンランプで照らしたクリュセ1の値の3分の1以下の値である。つまり火土のサンプルは、光のあるところでは光合成の働きが強く、暗いところでは弱いという結果を示したわけである。したがって土壌に潜む何かが、光合成を営んでいるように見えるのである
